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  • 2012.05.04 Friday
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蔵屋物語 第四話

 「馬頭観音」 栗山匙太郎 作







井出六兵衛の営む食堂はひとしずく通りのはずれにある。
雑貨屋や古本屋などがほそぼそとつづく通りには、人の姿は少ない。
蔵屋も同じ通りにある。
蔵之介は遅い昼飯をたいがい「いで食堂」で済ませることにしている。







食堂の脇にはさび付いた消火栓がある。
蔵之介はよくそこで用を足した。
店に入ると、六兵衛はあいかわらずテーブルに片肘を付いたままうたた寝をしている。
トランジスタラヂオからはお気に入りの「歌謡パラダイス」が流れていた。
六兵衛は園まりのファンである。
「逢いたくて逢いたくて」が流れると、その奥目をうるませることがあった。






「六さん、いつもの」
蔵之介の声で六兵衛はやっと顔を上げ、おお、と返した。

品書きは三つほどしかない。ラーメン。炒飯。そしてBランチ。
当初はそれなりの料理が出されていた。カツ丼もあれば、時期にはハッタケそばも出た。
しかしまずい順からそれらの料理は姿を消していった。
ただしAランチというものは初めから存在していない。
蔵之介は特製のラーメンしか食べなかった。カツオだしの効いた汁の上に、かまぼこが三枚。
まず、かまぼこだけを食べるのである。箸のさばきも、人よりもうまいものである。







食い終えて、蔵之介はぬるい番茶を啜った。
晩秋の斜光が床に散っている。
そこにぼんやりとした影がある姿にゆらめき始めた。
「六さん、現れたじゃ」
ふたりは並んで佇み、床の上の影を眺めた。
「よくおでんした。馬頭観音さま・・・」
六兵衛は手を合わせた。蔵之介も手を合わせた。そして人参を一本、六兵衛は床に供えた。

町のはずれに、わびしく石碑が建っている。








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コメント
蔵屋に行ってみたいものです。。。
ところで、今月は紺屋町に行きますので、そのときにお買い物いたします。モダンなもの、たくさん持って来て下さいです。
  • himawari
  • 2011/11/02 11:06 PM
了解です。紺屋町の折、魔人に飾り棚のガラスを持ってきてくださいとお伝えください。いつか蔵屋に魔人が現れるかも・・・
  • モンブラン
  • 2011/11/03 6:58 AM
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