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  • 2012.05.04 Friday
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蔵屋物語 第三話

  「カカシ」 栗山匙太郎 作







里にも雪が舞い落ちたある日のことである。
蔵屋の硝子戸を乱暴に開けて入ってきた男がいた。
「タ、タ、タ、丹下左膳だぁ」
「・・・」
蔵之介は応じなかった。
「タ、タ、丹下だぁ。左膳だぁ」
蔵之介はわざと天井を見上げ、やれやれと呟いた。
「おめ、タ、タ、丹下左膳知らねのか。この目ん玉の傷っこ知らねってか」
「知らね」







男のいきおいは失せ、落日のようにうなだれてみせた。
「なにすに来た」
「おらの壺っこ、ねべが」
「ね」
男は消沈しきった。すると今度はやつれた面を上げ、
「あああああああ!」と、ふやけた声を発した。







「おめ、万作のとこのカカシだべ」
「んだ」
「どうすた」
「もうお役ご免だぁ。稲っこは刈ってしまったし。ほれ、見てみろじゃ」
男は左目の傷を指差した。
「この傷っこ。ガキどもが画いていったじゃ」







「よぐ画けてるじゃ」
「あほ。そったなこと、褒めるんじゃね」
「だば、なんて言ったらいいべ」
男は深くため息をつき、
「なぐさめてけろじゃ・・・」と言ってさめざめと泣いた。
蔵之介はそれから小一時間ほど万作のカカシをあれこれなぐさめた。

「一歩は二歩でね」

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